六本木の夜は更けて・・

人にはいくつかの転機がある。
その昔、ミュージシャンや役者をやっていた。ある時とてつもなく
煮詰まってすべてを止めて、誰も知らないロサンゼルスに一ヶ月ほど
逃げ込んだ。戻ってきたときには自分の中に何もなかった。
目標を失って乾きだけを感じていた。その後ただ英語のブラッシュアップ
のために六本木のレストランに職を見つけた。やがて学芸大学という街で
ひとり暮らしを始める。なんとなく滑り出した新しい生活。
とにかく忙しかった。それでも癒えない乾きと少しの興奮が帰路を断ち切る。
わずかな給料は毎晩六本木の街に消えていった。とにかく、感情は喧噪と
いうこの街のゴミ箱に捨てていた。そんな俺がひょんなことからこの街では
割と大きなレストランに属する店のゼネラルマネージャーに抜擢された。
名前に追いつけない自分の非力さ、無能さ。ストレスに蝕まれ円形脱毛症に
なる。乾きは消えるどころかどんどん増してゆく。いつもどこかに空虚さを
抱え、眼前にそびえ立つ東京タワーを眺めていた。この街で働き、笑い、
怒り、泣き、戸惑い、成長した。やがてその道は書へと続いてゆく。
その話はまたいつか。

昨夜、その時の仕事仲間(と言うか今では普通の友人たち)が六本木に集結。
仕事を辞めた後も仕事や飲みでよく来ていたが、今回初ヒルズを体験。
特に興味もなかったし。▼ホリエモンらの住居。

ここのそばの中国料理屋で火鍋を食べながらビール〜紹興酒〜ワイン。
話は例のIT企業になる。今回飲んだ友人のひとりがその会社の現社長の秘書
をかつてやっていた。やはり突出した人らしい。いろんな意味で。

初ヒルズならとことん行こう。ということでGRAND HYATT東京の
BAR MADUROへ。ジャズの生ライブを聴きながらドンペリとキャビア。
たまにはいいだろう。

迷霧晴れぬ時を過ごしたこの街の日々から十年と少し。
自分にとって特別な感慨がある街。
あの頃の乾きはない。東京タワーの灯りも見ずにタクシーに手をあげた。

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